建築VRを作成できるソフトまとめ7選

建築設計から建築VR業界に入って早3年が経ちます。

様々な建築ソフトやVRソフトを業務で使用しております。

 

VR業界ならではの視点から、建築プレゼンテーションの最前線であるVRについて書きたいと思います。

設計段階のプロジェクトを設計者がVRで確認できたり、お施主さんと共有できたら素晴らしいですよね。

メタバースという言葉がバズワードになった今、VRについての包括的な記事が欲しいと思いまとめを作ります。

 

VRには特別な知識が必要なのか、お金がかかるのか、ゴーグルが必要か、外注した方がいいのか、様々な疑問が出てくると思います。

それでは、一言でVRといっても、まずはVRではどんなことができるのか早速見ていきましょう。

 

建築設計に使えるVRコンテンツの区分とメリット

テクノロジーは日進月歩ですので、現状でどのフローが最適解で、どの程度続くのかというのは判断が難しいところです。

この記事を書いた頃に、VRコンテンツの作成手段について少なくとも一つの意見を残しておくことが何かの役に立つかもしれないと考え、書くことにしました。

軸としては、VRコンテンツの種類による区分と、建築のソフト対プラットフォームの相性とがあります。

まずはVRコンテンツの区分として、どんなものがあるか書き出してみました。

 

VRコンテンツの区分

VRゴーグルをかけて体験するVRコンテンツ

おそらく、一番想像しやすいのはヘッドマウントディスプレイによるVR体験でしょう。

よくテレビで頭に大きい機材を付けて仮想現実空間を彷徨うあれです。

区分としては、複数人なのか1人なのか、音声チャット機能があるか、ゴーグルはスタンドアロン型かPC型か。

テレポートや移動ができるか、物を掴めるか、物体との衝突があるか、、、

コントローラーによる移動かハンドトラッキングか、キーボード操作か、、、

と色々あります。

ウェブブラウザ等で体験するVRコンテンツ

これはゴーグルなしでVR空間の中をブラウザで体験することができるコンテンツになります。

高価なヘッドマウントディスプレイ(以下HMDと略)なしで体験できることを考えると導入障壁は少なくなります。

移動が無制限のウォークスルーか、定点かによって分類されると思います。

ウェブブラウザでなくとも、インターネットなしで体験するエグゼファイルによるVRコンテンツもあります。

動画


これはVRを使用した動画出力です。例えばMP4やAVI形式等になると思います。

せっかく全方向から眺められるVRの良さを100%使いきるには、動画を作らない手はありません。

任意の様々なルートが取れるのが良い所になるかと思います。

360°パノラマ


これは定点で回りを見回せるものですね。魚眼レンズのような歪みを持った一枚の画像データから作成できます。

静止画に近いですが、360°パノラマ画像の組み合わせでウェブブラウザを定点移動しつつ見るコンテンツ等もありますね。

静止画

これはVRとは無関係と思われがちですが、VRコンテンツから、静止画を書き出すと自由なアングルでほぼ無制限に絵が出せるのでとても便利です。

レイトレーシング、パストレーシング等の区分があり、プラットフォームによって様々な速度やクオリティーがあると思います。

 

VRコンテンツを作成するメリット

メリットとしては、プレゼンテーションの幅が広がるということでしょう。

 

VRコンテンツを制作することで、仮想現実内に建築物を建てることができます。

仮想で建築があるということは、上で紹介した様々な方法で無制限にレンダリングを出したり色々な方向から見たりすることができます。

 

設計者であれば、より説得力のあるプレゼンテーションが可能になると思いますし、

お施主さん側からするとより直感的に理解できるコンテンツとなると思うので、是非使用してみたいですよね。

 

建築設計に使えるVRプラットフォーム(ソフト)一覧

現状、私が知り得るVRにアウトプットができそうなプラットフォーム/ソフトは、以下です。

  • Omniverse
  • Twinmotion
  • Enscape
  • Lumion
  • UnityReflect
  • Unity
  • Unreal Engine

 

DCCツールや設計ツール(モデリングソフト)対 VRプラットフォーム(ソフト)の相性

私の思いつく限り、設計に使われそうなソフトといえば、

Revit/Archicad/Rhinoceros/Grasshopper/3dsMax/Sketchup/AUTOCad/Fusion360/Houdini/Maya/Blenderあたりでしょうか。

VRプラットフォーム/ソフトとの相性等もあります。

 

上記のDCCツールや設計モデリングツールで作った各モデルデータはメッシュ形状・UV(マテリアルを当てる座標情報)・マテリアル等情報が綺麗な形で橋渡しできず、

基本的にはVRプラットフォームでそのまま使えないためモデルを作り直す必要があるという事情がありました。

 

しかし、最近そのフローがだいぶ改善されてきていて、

ソフトとの相性が良ければそのマテリアルやメッシュ形状がそのまま使えるパターンがあるということも分かっています。

UVも最適化できなくとも、自動展開機能があったりして、必ずしも最適で美しいデータにしなくとも、

ある程度のプレゼンテーションに耐えるものができることがあります。

 

もちろんVR用に別モデルを作ればパフォーマンスと見栄えの両方を手にすることができますが、

多少パフォーマンスやクオリティを犠牲にしてでも、元のモデルをそのまま使用して工数を減らすことがソフトによってはできると思います。

 

それでは各VRプラットフォームの特徴を見ていきましょう。

 

Omniverse

今一番、ビジュアライゼーションツールとして注目しているのはNVIDIA社のOmniverseというソリューションです。

グラフィックボードのメーカーならではの高品質かつ高速なレンダラーを内包した、

デジタル ツイン シミュレーションを構築するためのオープン プラットフォームになります。

▼Omniverse公式ダウンロード

 

当然グラフィックボードはNVIDIA社のRTXGPUが必要とされますが、パフォーマンスには目を見張るものがあります。

 

強みはメジャーなソフトウェアと連携を可能としているハブとしての機能と超高速のパストレーシングレンダリング機能でしょうか。
ほぼ思いつく限りのソフトウェアにコネクタというプラグインを入れる事でオムニバースにモデルを書き出しできます。

 

そして、Omniverse View/Omniverse Create/Omniverse Machinima/Omniverse Create XRという建築モデルを自由に料理する機能が付いています。

それぞれフォトリアルビューワー、オーサリングツール、動画作成ツール、VRビューワーであるOmniverseの各ビルド使って以下のような事が出来ます。

 

1.様々なDCCツールで作成したデータを(リアルタイムかつ非破壊的に)合成する。

2.ライティング、マテリアル、点景、ポスプロ等で絵を整える。

3. アウトプットとして書き出す(絵、動画) もしくは、 VRをHMDでそのまま見る。

 

簡単に言えば、建築モデルをフォトリアルに、リアルタイムでストレスなく確認できるツールでしょう。

それから有料版(Enterprise)では、複数人、複数ソフトによる同時コラボレーション機能もあります。

同じPC間でモデルを書き出す分には無料で使えるというクリエイターに優しいソリューションです。

 

VR視聴機能に至ってはリアルタイムレイトレーシングをしながらテレポート、フライスルー等の視点移動が可能です。

床やモデルとの衝突判定もできているようで、かなり直感的にVRモデルを視聴できます。

ただし、反射やライティング等を多用したシーンではマシンスペックによってはフレームレートが落ちる場合があるので、

重いシーンのレンダリングにはハイエンドマシンを用意したい所です。(参考スペックは以下記事参照)

▼CGWORLD.JP-積木製作が徹底検証! Omniverse XRがもたらす、XR時代の新しい建築デザインワークフロー

 

パストレーシングの速さは群を抜いて速く、フォトリアルなレンダリングがすぐに返ってくるので、設計段階で重宝すると思います。

例えば、PlateauのLod1データであれば、東京23区全域を読み込んでパストレーシングを掛けられます。

太陽シミュレーションや樹木などの点景もそれなりに充実しているので好印象です。

 

ここまで高いレベルのレンダリングが無料で可能なプラットフォームが出てきてしまうと、

有料のVRAY等のレンダラーの存在価値が薄まってしまうのではと思ってしまいます。

ただVRAY等の完成した有料のプロダクトに比べると、まだ未開発の部分も多々あり、これからどう発展するかとても楽しみです。

 

Omniverseが特徴的なのはUSD(Universal Scene Description)という参照構造を持ったファイルでデータを扱う所です。

USDと言えばHoudiniのSolarisでも使用できるデータですね。バージョン管理や、メモリに読むかを能動的に選べたりと色々便利そうです。

データ量がかさみがちな建築データとUSDの参照構造は親和性が高く、

きちんと理解して使えれば最適なデータ管理が可能ではないかと期待しています。

 

一点、注意すべきはUSDが日本語等のマルチバイト文字に対応していないことです。

例えば、REVITでフォルダ名やマテリアル名等に日本語が含まれているとモデルが書き出しされません。

 

未来にUSDが日本語対応する予定があると聞いていますが、今のところまだではないかと思われます。

そもそも英語のソフトなので、そこは期待しないで英語版ベースで、フォルダ、テンプレ構成等、英語で組むのが良いのではと思っています。

 

Twinmotion

 

TwinmotionはUnrealEngineのテクノロジーをベースとした、”とても雰囲気の良い” デジタルツインのためのプラットフォームです。

これもビジュアライゼーションツールとして優秀なソリューションだと思います。

 

プラグインを連携しているソフトウェアにインストールして、datasmith形式のファイルを書き出し、それをTwinmotionで読み込みます。

Omniverseと同じく、ほとんどの主要なソフトからの書き出しをサポートしており、リアルタイムなレンダリングを簡単に提供してくれます。

 

特筆すべきは、ライトのレンダリングクオリティです。

適当にライトを配置して太陽シミュレーションを掛ければライティングの調整なんてほとんど必要がないくらい綺麗な画が出ます。

恐らく、ここまで簡単に、「ライティングの設定が必要のない設定」を最初から用意しているのはこのツールの強みだと思います。

今までの常識では、ライティングはプロが調整するものであって、

「それの調節次第でクオリティに大きな差が出る!」というのがレンダリングの定説であったと思います。

それを見事に覆してくれる、直感的で最初から準備されている設定(?)が素晴らしいです。

 

それから、UIが直感的で使いやすいです。

チュートリアルが必要でないのではないかと思ってしまうくらい、触るところが絞れていて使いやすいです。

 

それから、点景の種類が豊富です。人物もポーズや動作等も何種類も選択できたり、木の種類にも大きさ等のパラメーターも仕込んであり、

家具、本等の小物等も充実しているので、モデリングは建築だけでOKなのではと思ってしまいます。

 

それから動画の作り方が非常に簡単です。

きめアングルを用意してあげれば、それの間を自動で補完してくれるような使い方です。

例えば、下のような動画がとても簡単に作れます。


それから定点360°パノラマの書き出しも非常にスムーズで簡単です。

パンすると360度周りを見回せます。

他のサービスを併用すればブラウザやツイッターに貼ったりもできます。

KUULA

 

価格は非商用版は、解像度が2Kまでと制限があるものの、無料です。

商用版も永続ライセンスかつソフトにしては低価格のようですので、個人でも手が届きそうな印象を受けます。

詳しくは下の記事からどうぞ。

▼Twinmotion-ライセンス&価格

 

 

Enscape

2022年秋に大塚商会さんのセミナー「建築の意匠設計は、もうEnscapeなしではいられない」を視聴してその存在を知り、HMDによるVRの視聴機能がある事を知りました。

▼Enscape公式

このプロダクトについては、まだ試用したことがないので詳しい解説が現状できないのですが、OmniverseとTwinmotionでできるような事は基本的に

できるのではないかという印象を持ちました。

 

ライセンスが14日の無料トライアルがあるものの、割と高価なので、

個人で使うのはハードルが高く企業様向けなのではという気配です。

 

無料トライアルを使用するチャンスがあり次第、追記できたら良いなと思っています。

 

Lumion

こちらも昔からあるレンダリングソリューションの一つだと思います。私は個人的に使用したことはありませんので説明は短く。

街単位でのレンダリング等キャパシティに定評があり、以前パースの外注をした際にパース屋さんがとても使い勝手が良いと言っていたことがありました。

 

割と有名どころのソフトウェアと互換性があり、VR視聴もできるようです。詳しくは下のリンクから公式ページをどうぞ。

▼Lumion 公式

価格はレンダリングソフトにしては標準くらいですが個人製作で買うには高い印象です。企業様向けかなと思います。

 

Unity Reflect

BIMをVRに自動変換して、複数人で同じコンテンツ内を体験できる有料ビューワー。(30日の無料体験期間付き)

これはVR内でモデルを確認することに重きを置いているソリューションだと思っていて、レンダリングの綺麗さを競うものではない気がします。

実務でモデルを多少ダイアグラム的にであっても、正確に把握・確認して、モデルにコメントを付けたり関係者の中での意思疎通を確実にするというところが強いと思います。

▼UNITY REFLECT REVIEW

 

Unity

UnityはVRプラットフォームというより、ゲームエンジンです。

ここからは既存のVRのためのサービスではなく、自分でプログラムを開発していく様なイメージです。

上の5つのサービスのように、ボタン一つでDCCツールからVRに持っていくというようなことではありません。

比較的自由度の高い、Unityでのビジュアライゼーションが可能ですが、専門的な知識を必要とします。

 

メッシュについての理解と多少のプログラミングへの理解、UV・モデル形式・マテリアル・シェーダー等の理解がないとUnityでのビジュアライズは難しいです。

正しい知識を持っていれば、とても自由度が高く、パフォーマンスを最適に絞った開発が可能で、ポテンシャルは無限大です。

 

Unity はデフォルト設定が非常に軽く作られているので、最初の見た目が最低です。

ビジュアライゼーションについては、初期値でこりゃダメだなと思ってしまうくらいのクオリティ見えますが、意外といじり倒すとかなり良いパフォーマンスが出ます。

反射やアンビエントオクルージョンのbake等でクオリティは上がっていくので、積み上げ式のプラットフォームと思っています。

built-in(デフォルトのレンダーパイプライン)では質感が乾いた感じに見える印象がありますが、URP/HDRPは結構しっとりとして、ブルーム等のポスプロも可能です。

URP以上であれば、shader graph や VFX graphにも対応しているため、様々な表現が可能です。

 

3次元データがあるのであれば、ほぼモデルは作り直す、UV開き直すこと前提で、モデルを再構築して最適なパフォーマンスを探りつつプロジェクト要件をクリアすることが可能です。

建築のモデルは大抵UVを考慮されてないので、自動展開に任せるか、もしくは綺麗に開きなおすかの二択です。

 

スタンドアロン型のVRにビルドしたりWEBにビルドしたり、最終成果物は色々な形にできます。

C#でインタラクションを付けたり、ギミックを仕込んだり色々できます。

割とエンジニア必須ですが非常にカスタマイズしやすい自由度の高いソリューションになります。

 

Unreal Engine

UnrealEngine(以下UE)もUnityと同じくしてゲームエンジンです。

ただし、ビジュアルのパフォーマンスがデフォルトで非常に高いので、ビジュアライゼーション向けのゲームエンジンなのではないかと思っています。

 

UEは個人的に時間を割いてきちんと触っていないので、想像の域を出ないのですが、デフォルトでとてもきれいな画が出ます。

ビジュアル重視で綺麗なので、デフォルトで重い設定の印象があります。

 

ブループリントというGUIでコードを書く事なくインタラクションが組めるらしいです。

よりカスタマイズするためにはC++なので一気に学習コストのハードルが上がるそうですが、かなり自由度が高いそうです。

 

UEもUnityと同じくボタンを押せばVRができるようなことではなく、ゲームエンジンの開発ができるノウハウと技術力が必須のプラットフォームです。

 

で、結局、建築ビジュアライゼーションのために何を使うべきか

個人制作の場合であれば、無料で試せるOmniverse/Twinmotionあたりから攻めていくのが良さそうです。

開発レベルで行うのであれば/Unity/UnrealEngineが視野に入ってくると思います。

お金をかけられるのであればEnscape/Lumion/Unity Reflectあたりも検討できるでしょう。

インタラクションを組まない場合Omniverse / Twinmotion

とりあえず、手っ取り早くVRゴーグルで眺めたいなら、RTXを積んだPCがあれば、Omniverseが最速でVRに結び付くので最有力候補かと。

Omniverseはちょっと色々ハードル高いよって場合は、Twinmotionの直感的な使い方が非常に有難いので、Twinmotionではないか。

 

インタラクションを組む場合Unity / Unreal Engine

コードを書いたり、GUIを使ったりして、インタラクションを組み込みたいならUnity / Unreal Engineでしょう。

最低限のUV、マテリアル、シェーダー、ライティングの知識は必要になるのはもちろんの事、コードやGUIも触れる必要があります。

かなりハードルは高いと思います。

どちらでもいいのですが、個人的には、PCのスペックが低ければUnity、高ければUEが良さそうな気がします。

 

資金のある企業様向けには用途によってEnscape/Lumion/Unity Reflect

設計支援ビジュアライゼーションツールとしてEnscapeにするのか、もしくはファイナルプロダクトのためのビジュアライゼーションツールとしてLumionにするのか。

また、VR内の意思疎通を重視したUnityReflectにするか等の選択が考えられると思います。

 

まとめ

 

VRのビジュアライゼーションツールとして以下の7つをご紹介させていただきました。

  • Omniverse
  • Twinmotion
  • Enscape
  • Lumion
  • UnityReflect
  • Unity
  • Unreal Engine

上の4つがビジュアライゼーションツール寄り。

上の5つが設計者も触れるプラットフォーム。

それに対し、下2つが開発者向け、エンジニアが必要なプラットフォーム。

お財布に優しいのは上の2つと下の2つ。

 

多少なりとも、各プラットフォームの一長一短や、使い道の目安として、ご参考にしていただければと思います。

これからも、各プラットフォームについての追加情報が分かり次第アップデートしていきたいと思います。

 

ではでは、今年もよろしくお願い申し上げます。

 

 

 

 

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